食事療法 記事詳細
2011.11.23【食事療法】
医療相談19
Q)
このホームページの食塩の項に「食塩の過剰摂取により腎障害や高血圧の悪化」とありますが、それは、血圧が正常の腎機能障害患者にも当てはまるのでしょうか?
ほとんどの啓発啓蒙書き物には、塩分は高血圧をきたし、脳梗塞、心筋梗塞、腎機能障害を誘発すると書かれていますが、高血圧をきたしていなければ塩分制限は必要ないのではないでしょうか?
A)
血圧が正常域であれば塩分は腎機能を悪化させないのではないか?
そして、その場合は塩分制限をしなくてもよいのではないか? というご質問と思います。
まず、大前提として口から入った塩分は100%体内に取り込まれ、取り込まれた塩分は腎臓を経由して尿成分として排泄されます。
なので、なんとか血圧や体液バランスを正常化するために、体内に取り込まれた塩分を腎臓は完璧に排泄しようと大いに働きます。
多くの塩分を取るということは、その分腎臓に多大な労力を課していることになります。
現在、血圧が正常域にあるということは、逆に言えば、まだ腎臓が塩分排泄を十分行えているということの裏返しでもあります。
多大な労力をかけすぎるとどうなるのか、というと徐々に腎機能が疲弊していく可能性がある、というのが分かりやすいのではないかと思います。
もちろん、どのくらい労力をかけると腎機能が破綻するのかといった問題は個人差の問題がかなりあるのではないかと思います。
腎臓により負担を与えないということを考えれば、塩分を取りすぎない方が腎臓には優しい、という状況になるのではないかと思います。
それでは、実際に血圧正常の腎機能障害患者で塩分制限のメリットがあるというデータはあるのか?という話になります。
塩分制限による腎機能の改善の指標としては、血圧の他に、蛋白尿や腎機能評価(GFRの低下速度)などが観察されることが多いです。
塩分制限により最も変化の起きるのは、やはり血圧です。塩分をとれば多くの患者さんでは(動物でも)血圧が上がりますし、控えれば下がります。
そして減塩により、尿蛋白が減少し、腎機能低下が抑制されます。
この現象は、塩分感受性の強い人と弱い人では塩分による影響の受け方が異なるので、個人差がある可能性はありますが、程度の差はあれ基本的な現象として認識してもらえればと思います。
多くの研究結果では、減塩に伴い血圧が低下することがほとんどなので、減塩による尿蛋白減少効果や腎機能低下抑制効果が、血圧降下を介した二次的な効果なのか、直接的な効果なのか、明確な区別は難しくなります。
しかし、血圧がほとんど正常に維持されている患者さんであっても、塩分制限を加えることで尿蛋白減少効果や腎機能抑制効果が認められたという研究結果もあります。
塩分の再吸収のためには、尿細管という部分で大量のエネルギーが消費され機能しているので、その労力を抑制してあげることが、このような効果につながっているのかもしれません。
これらの研究結果を考えれば、血圧が正常域に入っている人でも、腎機能の維持のためには塩分制限をした方がよいのではないかと思います。
ただし、3g/日を割るような過度な塩分制限は安全性が確立しておらず推奨されていません。
また、夏場の肉体労働時のように、かなり体内の塩分が喪失するような場合には、喪失分は摂取する必要があります。
また、降圧薬+塩分制限により過度に低血圧になるような場合(ふらつきなどの低血圧症状が出るような場合)には降圧薬の中止や塩分摂取を促す場合があります。
そういった極端な場面でなければ、腎機能低下患者の場合は塩分は控えめというのが無難な方針と思います。
腎機能や血圧が正常とされる人であっても、腎機能への過度な負担はあまり好ましくないと思われます。
腎機能がまだ良好に保たれている状態であれば、腎の塩分排泄の余力は十分あり高血圧を来さないこともありますが、徐々に排泄能力が衰えていくと次第に高血圧に移行していく患者さんが多くなります。
血圧が正常だから塩分制限が必要ない、というよりは、血圧を正常に保たせている腎に今以上に負担をかけず腎機能障害や高血圧を誘発させない、という観点で塩分制限が重要ではないかと思います。
以上、ご参考頂ければと思います。










