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2011.10.09【ニュース】
高橋京子先生の論文公表!
信州大学腎臓内科出身の高橋京子先生の論文が海外の一流誌 Toxicology and Applied Phramacology に掲載されました。
信州大学腎臓内科出身の女医さんは、今までに6名ほどおりますが、全員がご結婚され、子供をもうけつつ、そして医師としての仕事を継続して続けています。
高橋先生も、その一人なのですが、一人のお子さんを育てながら、そしてもう一人のお子さんを身ごもりながら、ご自分の研究結果を一流誌の論文として掲載することに成功し、この業績を基に今夏、医学博士となりました。
高橋先生は、現在、長野県内の市中病院の透析管理を中心に臨床でも第一線で活躍されています。
ご結婚されても臨床及び研究で大いに活躍できるということを、また、そういった女医さん達を支える土壌が信州大学腎臓内科にはあるということを、多くの研修医や医学生に知ってもらいたいと思い、このHPでご紹介しました。
今回、せっかくなので、その論文内容についても簡単にご紹介します。
掲載された論文名は「Pretreatment by low-dose fibrates protects against acute free fatty acid-induced renal tubule toxicity by counteracting PPARα deterioration」というものです。
日本語にすると、「低用量フィブラートによる治療は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α 型( PPARα )の機能低下を阻止して、遊離脂肪酸による急性腎尿細管毒性に対し保護作用を発揮する」というものです。
PPARαは腎臓のエネルギー産生の恒常性(特に脂肪酸代謝による)を維持する大変大事な核内転写調節因子です。
信大腎臓内科は、信大大学院医学研究科の代謝制御学講座との共同研究により継続的に腎におけるPPARαの生理的機能、また腎臓病における役割について研究してきました。
PPARαは腎臓病になると機能低下を起こします。PPARαが機能低下を起こすと、腎の脂肪酸代謝が低下し、そのことが元で尿細管細胞障害がおき、腎機能障害を助長していきます。
フィブラートとは、高脂血症剤として臨床応用されているPPARαの活性化剤です。
この薬をマウスにあらかじめ投与しておくと、急激な尿たんぱく排泄に伴う腎機能障害の進展が抑制されるということを、高橋先生は発見し、この論文を作成しました。
さらに高橋先生は、フィブラート製剤には二面性があり、PPARαを介した腎保護作用とともに、高用量の場合には逆にPPARα非依存的な腎毒性作用が出現することもつきとめました。
慢性腎機能障害時には、フィブラート製剤は体内蓄積しやすいため、実際にフィブラート製剤をヒトの腎臓病患者に用いる場合には、細心の注意を払うべきであると警鐘を鳴らしています。
つまり、腎機能障害がはっきりする前の段階であれば、おそらくフィブラート製剤は腎保護的に作用するだろうと予想されますが、腎機能障害がはっきりとした腎不全患者の場合には、逆に腎機能低下を助長する可能性があるのではないか、ということです。
今後、PPARαを介した慢性腎臓病治療を模索する上で、大変貴重な情報のつまった論文であると世界的に評価されています。
信大腎臓内科では、上記の高橋先生の研究結果に引き続き、今後も継続的に未来の腎臓病治療に役立てるべく、臨床研究だけでなく基礎研究にも力を入れていく予定です。
多くの未来の研究者を歓迎します。
このような研究に興味がある方は、ぜひ信大腎臓内科の門を叩いてください。