Dr.H の徒然日記 記事詳細
2008.10.16【Dr.H の徒然日記】
朝バナナ
最近外来であったことです。
70代男性、持病に糖尿病があり、それを原因とした慢性腎不全で外来通院、内服治療中の患者さん(Aさんとしましょう)がおられました。これまでカリウムの値は正常範囲が続いておりましたが、ある日の外来で採血結果を見てびっくり。カリウムが異常に高いではありませんか。
よくお話を伺うと最近はお子さんに勧められて、毎日朝はバナナと水だけにしているとのこと。バナナの量に制限はないので日によって何本も食べているとのことでした。
おそらくカリウムの過剰摂取に伴う高カリウム血症と思われます。その方にはバナナはカリウム含有量が多いこと、腎機能の低下のために過剰に摂取したカリウムを排泄することができないこと、を説明し、制限が必要であると指導させていただき、カリウムを下げる治療を始めました。
一般的に果物類などはカリウム含有量が多めですが、バナナはその代表格です。1本食べると大体400-500mgのカリウム摂取となります。カリウム制限といった場合、程度にもよりますが1日あたり2000mg以下に制限されますので、バナナ2本食べると半分近くに達してしまいます。当然のことながら野菜などのそれぞれの食品からもカリウムが摂取されますので、普通に食べるとオーバーしてしまう可能性が高いです。
高度の腎不全でなければ、あまり自覚症状はなく、尿毒素の蓄積がある程度あったとしても特に命にかかわることはありません。しかし、高カリウム血症は別です。カリウムは筋肉の運動に関わりますが、カリウムが高い場合(低い場合でもそうですが)その運動がうまくいかなくなってしまいます。手や足の力が入りにくくなったりします。そして、筋肉の塊である心臓もうまく動かなくなってしまうことがあります。極端な話、突然心臓が止まってしまうことだって決して稀ではありません。腎不全の患者さんの場合、腎機能の低下のためカリウムをおしっこの中に排泄する力が落ちていたり、腎機能保護、高血圧の治療のため内服している薬剤の中にカリウムが上がりやすくなる作用を持つ薬が入っている可能性があります。カリウムが上がりやすい素因がありますので、過剰摂取には気をつけましょう。
朝バナナダイエットが現在流行っているようですが、腎機能が悪いといわれている方は要注意です。興味のある方は主治医と相談してみましょう。
以上、いまひとつまとまらない話ですが、そういったことがあった、という話でした。
*食事療法のカテゴリにある「カリウムにご注意」がよく書けていますのでこちらもご参照ください。