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腎臓内科医のひとり言 記事詳細

2011.03.30腎臓内科医のひとり言

原発事故と医療事故

日々、東日本大震災のニュースが流れています。

まず、被災地で懸命に戦っている被災者の皆さん、また自衛隊や医療派遣部隊など多くの災害救助スタッフの安全と、より早い復興をお祈り申し上げます。

大震災による被害はとても甚大であり言葉にならないほどですが、それに追い打ちをかけるように福島原発のトラブルが、日本全体を不安にさせています。

今回の原発事故の正確な情報を得ていないので、我々が何か言える資格もありませんが、メディアから流れてくる情報から判断すると、現在のようにお手上げの状態になる前に最善の道はなかったのだろうか?と思わざるを得なくなります。

原発のトラブルが生じた初期段階で、アメリカや欧州から助言や援助の申し出があったにも関わらず自己完結を目指した結果(そういった意図であったのか、他の理由であったのかは明らかではありませんが・・・)、政府や電力会社はそういった申し出を断り、自己の判断を押し通し現在の状況をまねいてしまったように思えてしまいます。また、原発開発のエンジニアや原発設計のメーカー各社にも十分な意見を聞いてない様子も報道されています。

これとよく似た状況が、医療の世界でもあるように思います。

我々腎臓内科にはいないと信じておりますが、スタッフや同僚から色々な意見を言われたりしても、そのような多様な意見に耳を傾けず自己の考えのみを主張するような人間が医療を行うと、一つの問題から、次々と起こさなくてもよいトラブルを誘発することがあります。そのような場合、その医療者本人は一歩も引けなくなり、さらに状況をこじらせてしまいます。

病気もそうですが、病状が燃え盛ってしまうと、だれが何をしても手が付けられない状況になります。

病気の治療も、初期にどんな根拠で判断を下し、どのような手当をするのか、がとても大事になってきます。またその判断が、多くの研究結果による確固とした治療根拠=エビデンスに基づくものであれば、もし不幸な転機をたどったとしてもまだ納得できるのですが、そのような治療根拠が明確でないと、それは判断ミスであったのではないか?と不信感が最大限に広がっていきます。

現在の原発事故の状況は、そういった医療事故の構造とダブってみえてしまって仕方ありません。

政府や電力会社には、自分たちの判断が最善であったというエビデンスを示してもらうとともに、今後の治療方針や治療過程についてのカルテ開示をぜひしてもらいたいと思っています。

現在、そのようなことをしている時間がない場合は、ぜひどうでもよい面子は捨てて、最善の道を多方面と協力して構築してほしいと思います。

多くの日本人は、必ずこの危機を乗り越えられると信じています。

これ以上の混乱が起きないよう願うばかりです。

 

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