1. HOME
  2. 診療案内
  3. 腎代替療法

診療案内

腎代替療法

信州大学では、関連病院も含め、腎代替療法は腎臓内科にて行っています。 末期腎不全に至り、腎代替療法の必要に迫られた場合、その選択はその後の生活に影響を与えます。信州大学腎臓内科では、現在ある腎代替療法のすべて(血液透析、腹膜透析、腎移植)を行っておりますので、患者さんやご家族に十分な情報を提供した上で、適切な治療法を相談し、選択していただいております。

信州大学腎臓内科では、2020年4月より腎代替療法選択外来を新たに開設しました(平日14:00~15:00、血液浄化療法部もしくは腎臓内科外来で行います)。この外来は、透析医療や腎移植に精通した医師および医療スタッフが各腎代替療法の特徴について十分な時間をかけて患者さんとご家族にご説明し、最も適した腎代替療法を患者さんに選択してもらうための専門外来です。患者さんの全身状況や腎代替療法導入後の生活スタイルの変化なども踏まえながら、腎代替療法に関係するあらゆるご相談に乗りたいと思います。この外来をご希望される患者さんは、腎臓内科の担当医にご相談下さい。

腎代替療法は、食事療法や薬物療法でも腎不全症状が改善しない場合に適応となります。 代表的な腎不全症状は、溢水症状(全身浮腫、呼吸困難、体重増加、高血圧、心不全など)、尿毒症症状(倦怠感、悪心、嘔気、頭痛、食欲不振、記銘力低下、意識障害、痙攣等)、不整脈症状(動機など)、貧血症状(倦怠感)などです。

これらの症状の出現は、血清クレアチニン値や臨床症状(浮腫、体重増加、高血圧など)により、ある程度予期できます。血清クレアチニン値が6 mg/dl以上になってきたら、あらかじめ腎代替療法の準備(腎代替療法の選択と、それぞれの治療法のための手術など)をすることをお勧めします。血清クレアチニン値が8 mg/dl以上になると、腎不全症状が出やすくなりますが、準備をしておくことで、症状出現時に速やかに腎代替治療を行うことが出来ます。

腎代替療法の準備前に、著しい腎不全症状が出現した場合は、中心静脈という太い静脈(内頸静脈もしくは大腿静脈)に太目のカテーテルを挿入して行う緊急カテーテル透析が必要となります。この場合は、出血や感染症などの合併症の頻度が高くなり、また緊急的血液透析をしながら、腎代替療法の準備を一から始めるということになるので、必然的に入院期間も長くなります。

症状が出現する前の対策が大事になりますので、外来で透析準備が必要と言われた場合は、なるべくその指示に従って頂いた方が無難だと思われます。

それぞれの腎代替療法について

血液透析

血液透析は、腕の血管から血液を採取して機械にかけ、余分な水分や尿毒素・電解質・酸性物質を除去した後、体内に戻す治療法です。週に3日間、1回の治療時間は3時間から5時間かけて透析治療を行います。

信州大学腎臓内科では、血液透析導入準備(内シャント設置術)、導入期の入院透析管理、また大学での入院加療が必要になった透析患者さんの入院透析を行っています。血液透析や病状が安定し、外来での維持透析が可能となった場合は、自宅から通いやすい近隣の施設で通院透析を継続していただきます。基本的に全身状態が安定した患者さんの維持透析は、透析ベッド数の問題もあり、当院では受け入れられないのが現状です。ご理解をお願いしたいと思います。

信州大学での血液透析は、主に月~金の平日に行っています。月・水・金の午前透析、もしくは午後透析が標準的な日程です。(火曜日や木曜日は特殊な血液浄化療法や腹膜透析との併用療法を主に行っています)。土日の休日は基本的にルーチンの血液透析は施行しておりませんが、緊急時には、緊急血液透析や持続式血液濾過透析(CHDF:continuous hemodiafiltration)をはじめとする急性血液浄化療法を行っています。 ちなみに、一般病院の透析施設では、月・水・金のサイクルの他に、火・木・土のサイクル、夜間透析(PM5時位~)を行っている施設もあります。転院の際には、転院先の透析ベッドの空き状況と患者さんのご希望により、治療日程が決まります。

信州大学医学部附属病院血液浄化療法部は2019年6月に透析室を移転拡充しました(透析装置10台→15台)。新たな血液浄化療法部の開設に伴い、on-line HDFなどの透析療法も施行可能となりました。透析の必要な患者さんに安全かつ高効率の透析療法を提供いたします。

■内シャント設置術について

外来での維持血液透析を施行するには、内シャント設置術(前腕の動脈と静脈を吻合し、静脈に針をさすことで透析が可能となる)が必要となります。手術後、数週~数ヶ月すると血管が発達し穿刺も容易となり、また血管閉塞の危険性も減ります。透析療法が必要になる前段階で、腎臓内科担当医から、腎代替療法の選択と導入準備についての説明がありますので、血液透析を選択された方は、この手術について前向きに検討してください。心機能等の術前検査も終わっており、手術日が決まっている場合は、おおよそ1週間程度の入院が必要になります。

図:内シャント設置術について

腹膜透析

透析治療には血液透析のほか、ご自分の腹膜を利用して行う腹膜透析という方法も存在します。血液透析に比較し、

  • 1. 体外循環や血管手術を必要とせず循環動態に与える影響が少ない
  • 2. 残腎機能の保持に優れる(透析導入後の尿量の減少が少ない)
  • 3. 透析治療を家庭や職場などで行えるため生活の自由度が高い
  • 4. 社会復帰がしやすい
  • 5. 食事制限が緩やか
  • 6. 夜間の就寝中に治療を行うことも可能(昼間は自由になる場合もある)

といった利点を有しています。
反面、血液透析に比較し、

  • 1. 除去療法としての効率は悪いため、残腎機能が残っていないと体調の維持が困難
  • 2. 治療の継続に伴い腹膜の劣化も起こるため、腹膜透析導入後7年位をめどに血液透析もしくは腎移植に移行する必要性がある
  • 3. 患者さん本人が、治療方法を理解し、実地しなければならない
  • 4. 腹膜カテーテルに伴う問題点が起きる場合がある(感染症を起こしやすい、入浴にやや不便など)
  • 5. 腹部膨満感が出現することがある

といった短所もあります。

一般的には、比較的年齢が若い方(昼間の間に仕事や勉強をする必要性が高い方)が選択する傾向があります。逆に、血液透析をするほど体力が残っていないご高齢の患者さんに行うこともあります。ただし、この場合は、ご家族の協力が必要です(定期的な透析液交換や清潔管理など)。

信州大学腎臓内科では、腹膜透析導入準備(腹膜透析カテーテル挿入術)、腹膜透析導入期の入院管理及び患者指導、腹膜透析患者さんの外来診察(病状安定後も大学に通院)を行っています。定期的な外来診察は、2週間~4週間に1回程度です。腹膜透析の外来診察は、月~金の平日に透析担当の医師が行っています。夜間や休日に、何か身体的な問題が生じた場合は、緊急当番の腎臓内科医師が対応します。

■腹膜透析カテーテル挿入術について

腹膜透析を施行するには、腹膜透析カテーテル挿入術(腹腔にカテーテルを一本挿入し、皮膚からカテーテルが出ている状態にする)が必要となります。腹膜透析の開始までに時間的余裕がある場合は、一旦カテーテルを皮下に埋め込みそのままにしておきます。この場合、腹膜透析が必要になったらカテーテルを取り出し治療を行います(二期的手術)。時間的余裕がない場合は、最初から皮膚にカテーテル出口部を作り、創部が癒えたら治療を開始します(一期的手術)。
手術施行から十分時間が経ち、手術創部がきれいになってから治療を開始した方が、感染などの問題が生じにくいため、早めの手術が好ましいと思われます。この手術も、手術日が決まっている場合は、1週間程度の入院が必要になります。

腎移植

信州大学腎臓内科では、当院泌尿器科と心臓血管外科と連携し、生体腎移植や献腎移植を施行しております。
手術自体は泌尿器科と心臓血管外科の合同チームが担当しています。腎臓内科は、術前の移植適応の決定や、術後全身管理のほか、その後の外来経過観察(免疫抑制剤の調節、移植腎の機能評価、全身状態の管理)を行っています。
腎移植は、免疫抑制剤を継続的に飲まなくてはならないという問題点はありますが、最も健常人に近い生活が可能となる治療法です。透析療法は、時間的制約が大きいことと、腎機能の一部分しか代償できないという問題点がありますが、腎移植の場合は失われた腎臓の機能がほぼ完全に回復します。時間に縛られることもなく、食事も自由に食べられます。
以前は、拒絶反応による移植腎機能低下が問題でしたが、最近は免疫抑制剤の進歩が著しく、移植腎の生着率も格段に向上しています(5年生着率は約80%、最近5年間では90%を超えるとされています)。
現在、ABO不適合移植や夫婦間腎移植なども可能となり、様々な選択肢が広がりつつあります。

生体腎移植の場合は、健康な提供者に手術をしなければならないという問題点があり、腎提供後の提供者の健康管理も必要となります。当科では、責任持って、提供者の経過観察も行っています。
献腎移植に関しては、献腎数が慢性的に少ない状態です。信州大学では、献腎移植の啓蒙活動や、献腎候補者が出現した場合には、移植チームを形成し積極的な移植医療を提供しています。

■生体腎移植について

ご家族から提供された腎臓を移植する方法です。自らの意思で腎臓の提供を希望されている親族からの提供に限ります。提供者の腎機能は移植後に余力が減ってしまいますが、それでも健康を維持できることが見込まれる場合に提供者になることが出来ます。
当院で生体腎移植を希望される場合は、腎臓外来を受診して頂き、意思を確認後、移植が可能かどうかの検査入院(約2週間程度)が必要となります。患者さんと提供者の双方の健康状態をチェックし、問題がなければ腎移植術の予定をすることになります。

■献腎移植について

亡くなられた方から腎臓を提供して頂き移植する方法です。献腎移植を希望される場合には、臓器移植ネットワークにあらかじめ登録する必要があります。腎臓提供者が出た場合、臓器移植ネットワークで適合度の高い腎不全患者さんが数名選ばれ、移植候補となります。この時点で信州大学に登録されている患者さんが、移植候補になった場合、大学から移植を受ける意思があるかどうかの確認連絡が入ります。この連絡は、何の前触れもなく急に来ます(真夜中でも連絡します)。時間的にすぐ返事をして頂く必要性があるので、献腎移植を希望される患者さんは、いざというときの心づもりをしておいてもらった方がよいと思います。腎移植を受けることを了承された方は、すぐに信州大学に入院となり、術前検査を受けた後、なるべく早く手術を行います。

このページの先頭へ